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樫や椈の木が無数に生い茂る深い森。
村を取り囲むようにどこまでも広がったその中に足を踏み入れていくと、陽光は枝葉に遮られてひどく薄暗くなる。
空がほとんど見えないのである、慣れた者でなければ方角を見失い出口が分からなくなってしまうだろう。
記憶を頼りに代わり映えのしない景色の中を進んでいくと、森の奥には人里を避けるように建てられた一軒の小屋があった。

「あら、久しぶりね。最近はちっとも逢いに来てくれなかったから寂しかったわ」

そこに住んでいるのは、紅を基調とするワンピースを纏った人形のような美貌の女性。
琥珀色の瞳に眦の方に向けてきりっと上がった眉、正面からでも分かるくらいに高く通った鼻筋。
胸元まで伸ばされた陰り一つ無い金髪はまるでその一本一本が太陽の光であるかのようにきらきらと煌めき、美しい顔を彩り立てる。
頭部には日光を象ったように金の細長い菱形が円形に連ねられたような形状の被り物を身につけ、けれどもあまりに派手な装飾に彼女自身の存在感は全く負けていない。
むしろ、自分こそが正当な所有者であると宣言するように装いの一部として自然と取り込んでいた。
小屋の扉を開いた音に反応して顔を上げた彼女は、優しく微笑みかけてくれる。
見慣れているはずのその笑みに、僕は思わず見蕩れてしまう。

「仕方ないだろ? 今は収穫期だから忙しいんだよ」

照れ隠しにぶっきらぼうになってしまう口調。
本当はもっと早く会いに来たかったのだが、そうはいかなかったのだ。
暦は歩みを止めることなく毎日巡り続け、もうすぐ冬が訪れようとしている。
黒麦や燕麦の収穫はもちろん、蕪を加工したり豚を屠殺して来る寒さに備えておかなければならない。

「分かってるわ。それより、今年の出来はどうだったの?」
「見事な大豊作さ。いつも力を貸してくれて本当にありがとう」

手に提げてきたバスケットから、焼きたてのパンと先月作ったワインを取り出す。
村で作った自慢のものである。
そして感謝の言葉と共にそれらをテーブルの上に置くと、彼女のために作ってきた拙い料理の数々もいくつか並べていく。

「あら、ありがとう。でもあまり気を遣わなくていいわよ。別に、こんなもののためにやっている訳ではないのだし」

依然として優しげな微笑を浮かべたまま、女性がこちらを見つめる。
強い光を宿した翡翠色の瞳と視線が重なると、僕は何となく気圧されるように目を逸らした。

「こんなものって……失礼だな。下手なのは自覚してるけど、僕だって頑張って作ったんだぜ」
「ああ、ごめんなさい。そういう意味で言った訳ではないの。貴方の料理はいつも楽しみにしているわ」
「……へ?」

抗議をすると、女性は蛾眉を顰めて申し訳なさそうな表情を見せる。
彼女の思わぬ言葉に、間抜けな声を上げてしまう僕。

「な、何でもないわ。それより、冷めてしまうから早く食べましょ」

慌てた様子で言うと、心なしか頬を紅潮させた女性は虚空からグラスを取り出す。
――そう、彼女は人間ではない。
不思議な力を目の前で見せられなければ到底信じられなかったかもしれないけれど、神様なのだという。
恐らくそれは本当なのだろう、そうでなければ女性が狼や熊が出るこんな森の奥で一人暮らすことなど不可能なのだから。
具体的には豊穣の神であるらしく、僕が住んでいる村の畑に力を及ぼしてくれているらしい。
それを裏付けるように、彼女と出逢ってから村には毎年のように大豊作が続いている。
僕はそのことへの感謝を伝えるために度々この小屋を訪れていた。

「ああ。今日の料理は自信作だから食べてみてくれ。……見た目は悪いけど」
「あら、君の料理はいつも美味しいわよ。見た目は悪いけどね」

からかうように言って、手に取ったパンを頬張る彼女。
小さな頬をいっぱいに膨らませた姿は先程までの神々しいまでの美しさとは一転してまるで栗鼠のようで、あまりの可愛さにまた見蕩れてしまう。
まだまだ下手なことは自覚しているけれど、それでもいつもよりはずっと上手く作ることが出来たと思う。
喜んでもらえるだろうかと、僕は思わず固唾を呑んでその様子を眺めていた。

「本当に美味しいわ。見た目はこんななのに、どうしてこんなに美味しいのかしら」
「やった、大好きな君のために頑張って作ったから」
「へ……?」

美味しいと言ってくれた彼女。
はらはらとしていた分だけ喜びは強く、その拍子に思わず本音が漏れてしまう。
それを聞いて、驚いたような表情で動きを止める彼女。
今度は向こうが間抜けな声を上げる番だった。

「……」
「……」

互いに無言のまま固まってしまう。
気恥ずかしさに、少し気まずい沈黙が広がった。

「さ、さあ食べようぜ。ワインも先月作ったばかりだからお勧めさ」

先に我に返ったのは僕の方だった。
慌てて、ワインを注いだグラスを差し出す。

「あーんして」
「へ……?」

今日二回目。
間抜けな声を上げるのは今度は僕の番だった。

「あーんしなさい」
「な、何を言ってるの!?」

突然のことに動揺を隠せず、僕は思わず大声を上げてしまう。
それくらい、彼女の要求は衝撃的だった。
しかし、彼女は何も答えることなく小さな口を可愛らしく開いて無言でじっとこちらを見つめてくる。
目の前にいるのは細身で綺麗な女性だというのに、まるで猛獣に睨まれている気分になる。
……本当にしなければならないのだろうか。

「あ、あーん」

長い逡巡。
その末に、無言という名の圧力に屈した僕は彼女の口元にパンを運ぶ。
すると彼女はもきゅもきゅとそれを口に含み、その度に彩やかに真紅の唇が指先に少し触れる。
それはとても柔らかく、彼我が触れる度に僕の胸は大きく高鳴った。

「ありがとう。君とこうして過ごせて、とても幸せだったわ。……この幸せがもっと長く続けばよかったのに」
「それって」
「いえ、何でもないわ。気にしないで頂戴」

ふと目線が合わさる。
可憐な容姿とは不釣り合いに深い琥珀色の奥に一瞬だけ悲しみが宿った気がして、思わず引き込まれそうな気分になった。

「それより、もっと食べさせてほしいわ」

すぐに、翳っていた表情がいつものような悠然としたものに戻る。
少し意地悪げに笑いながら、囁きかけてくる彼女。
しかし、それでもなお彼女の様子はどこか違和感を孕んでいた。

「一体どうしたんだ? 今日は少し変だよ」
「……何でもないわ」

そもそも、よく考えればいつもはこんなに僕のことをからかってきたりはしない。
そう考えれば、彼女の不自然さは今急に始まったものではなかった。
何かあったのだろうかと心配していると、彼女は表情と口調を固くしてそれを跳ね除ける。

「それなら何も言わないけど……。僕に出来ることがあれば何でも力になるよ」

拒絶されてしまったからには、それ以上無理に踏み込むことは出来ない。
何も無いという言葉に対し、大人しく頷くことしか出来なかった。

「本当?」
「ああ、もちろんさ」
「それなら、私を抱き締めて。そして好きって言って。それだけでいいの」
「分かった」

それでも何か力になれることは無いかと尋ねると、彼女は抱き締めてほしいと言った。
ついさっきまでなら、そんなことを言われれば胸の鼓動が自分では抑えきれなくなってとても平静ではいられなかっただろう。
けれど、断じてからかっている訳ではないのだと分かる真剣な表情が僕に慌てることを許さなかった。
背中に腕を回して彼女の細い身体をぎゅっと抱き締めると、ワンピース越しに温もりが伝わる。
日光を浴びているような爽やかな香り、そして柔らかな胸の感触。
彼女の身体はとても暖かかった。

「愛してるよ。もし許してくれるなら、ずっと一緒にいたい」
「ありがとう。私も好きよ。大好き。愛してるの」

僕が言ったのは何一つ偽りの無い心からの言葉。
そして身体が離れると、彼女の真っ白で綺麗な頬を涙が濡らしていた。
零れていく雫はまるで宝石のように輝いていて、幻想的でさえある。
それを止めたかったからだろうか、或いは言葉にしたことで彼女への想いが溢れ出したからだろうか。
僕は彼女の紅い唇に口づけていた。
柔らかな感触が伝わり、甘い味覚が広がる。
どうして泣いているのだろうという根本的な疑問さえ消し去るように、ぼんやりと意識が虚ろになった。

「ごめんなさい、何だか今日は切ないのよ」
「いいよ、もしも泣きたくなったら、いつでも僕の胸を貸すから」
「信じているわ」

一瞬、それとも太陽の位置が目に見えて動くくらいの時間だろうか。
時間の感覚が狂ってしまいどれくらいの間だったのかはよく分からなかったが、唇が離れる。
全てを誤魔化すように微笑むと、そっと立ち上がる彼女。
ふわふわの服の裾を揺らしてこちらを振り向く。

「今日は本当にありがとう。とても嬉しかったわ」
「僕もさ。愛してるって言ってくれて嬉しかった」

初めて想いを伝えられた日なのだ、きっと今日のことはずっと忘れないだろう。
もう一度抱擁し合うと、僕らは身体を離す。
すると、再び彼女の顔に翳りが差した。

「それとね、これから一月くらいは何があっても絶対にここには来ないでほしいの」
「どうして?」
「神としてどうしてもしなければならないことがあるの……お願い」
「分かった。じゃあ、次は謝肉祭の頃に来ることにするよ」
「待っているわ」

彼女の口調はまるで懇願するようなもので。
しばらくの間逢えないというのは寂しいけれど、こんな言い方をされてしまったら断ることは出来なかった。
いずれにせよ、僕もこの時期は村でしなければならない仕事があって忙しい。
冬への備えが一段落したらまた会おうと約束して、僕らは別れを交わした。









そして数日が過ぎ、冬至が訪れた。
冬至の日にはヴィドゼメ中の村々が祭りを行う。
それは僕が住む村も例外ではなく、今日は朝から大宴会が行われていた。
村の男達は酒を飲み肩を組んで大騒ぎをし、女達はそれを見て呆れたように笑いながらも自らも楽しむ。
空を覆わんばかりの歓声が響いているこの幸せも、豊穣をもたらしてくれる女性の不思議な力のおかげである。
今頃、彼女は何をしているのだろう。
美しい姿を思い浮かべると、ふと彼女に逢いたくなった。
――その時だった。

「……誰だろう」

喧騒から目を逸らして彼女が住んでいる小屋のある方向に顔を向けると、遠くに鎖帷子を着た男達の姿が見えた。
鎖帷子はこの辺りではあまり使われておらず、ずっと南にあるローマという大国において盛んに使われているらしい。
彼らはローマ人なのだろうか。
そんな風に考えていると、男達は森の中へと入っていく。
人の手などほとんど加わっていない深い森なのである、あの辺りには女性がいる小屋以外のものなど何も無い。
悪い予感がした。
僕は彼女との約束も忘れて駆け出していた。
村人達は皆酔っ払って騒ぎに夢中で、誰も僕の様子には気付いていない。
もちろん、異国からの来訪者の存在にも。

「はぁ、はぁ」

さっきの男達に見つからないように慎重に、地面に残されている足跡を辿っていく。
大人と子供の体力差なのだろう。
整備などされていない隘路だというのに彼らはかなりの速度で移動しているようだが、僕はそれに続いて歩いているだけで軽く息が切れてしまう。
それでも、警戒すべき狼や熊の存在さえ忘れて僕は懸命に追いすがった。

「っ!?」

そして、僕は開けた場所に出た。
一体ここがどこであるか、僕はよく知っている。
今までに何度も訪れてきた彼女の住む小屋の目の前、けれどもそこには無視し得ない非日常が存在していた。
木で組み立てられているらしい大きな十字架、そしてそこに縛りつけられたあの女性の姿。
その光景に声を上げそうになった僕は、慌ててそれを押し殺す。

「卑しい悪魔め、獄炎へ落ちるがいい」

白いローブを纏った男が、彼女のことを罵る。
村に来た行商にローマではキリストという神が信仰されていると聞いたことがあったけれど、この男がキリストを祀る神官なのだろうか。
首から十字架を提げているし、装いはその時に聞いたものと一致していた。

「地獄なんて何処にも無いわ。死んだら、ただ静かに辺りを見守るだけ。無論、私もね」
「黙れ! 卑しい悪魔の分際で主の教えを否定するか!」

縛られていてさえ翳ることのない神々しく荘厳な美しさに似つかわしい、まるで村の長老が誰かを諭す時のような口調。
それを聞いた神官の男は何故かはよく分からないが激高していた。

「ふふ、そんななら安心して殺されてあげられるわ」
「覚悟を決めたか」
「私のような存在なんてもう用無しということよ。もっとも、今まで用があっただけ貴方が信じているものよりましだと思うけれど」
「おのれ、言うに事欠いて主までも侮辱するか! 許さぬぞ!」

皮肉げに笑いながら、それでいて寂しげに呟く彼女。
だがそれも火に油だったらしい、ますます激高した男は怒りに任せて彼女の頬を殴りつける。
思わず目をつぶる僕。
しかし、恐る恐る目を開けると遠目に見る白く美しい顔には傷一つついていなかった。

「仮にも私は神なのよ。ああ、貴方にとっては悪魔だったかしら。たかが殴打一つくらいで傷など負わないわ」

「邪悪な化物め……」
「やめろ、彼女を離せ!」

殴られたというのに、女性は何故だか楽しげに笑っている。
けれどこれ以上何をされるのかと考えるととても我慢できず、憎々しげな呟きを耳にした僕は咄嗟に木陰から飛び出していた。
出せる限りの大声で叫ぶ。
それに反応して、兵士達と神官が一斉にこちらを振り向く。
――飛び出したはいいけれど、この人数相手に僕一人ではどうすることも出来ない。

「何者だ?」
「どうして抵抗しないんだよ! その気になればこんな奴らなんて簡単に蹴散らせるだろ!」

だから、誰何する神官を無視して彼女に話し掛ける。
本物の神である彼女が抵抗すれば、こんな奴らを倒せないはずがないと信じていた。

「心配してくれてありがとう。でもね、ここで抵抗すればきっとこの地は戦乱で荒れることになるわ。私はそんなことを望んでなんかいない」
「だからって君が……!」
「これでいいの。私はここで消えるべきなのよ」

僕の言葉を遮って、彼女が言う。
優しい眼差しで僕を見つめる姿には、今まであまり見せなかった女神としての確固たる威厳のようなものが宿されていた。
何もかもを包み込むような雰囲気を前にして、僕は言おうとしていたことを全て忘れてしまう。

「そこの村の住人か。少年よ、お前はこの悪魔に誑かされておるのだ」
「黙れっ、彼女は悪魔なんかじゃない!」

口を噤んだ僕に、神官の男が話し掛けてくる。
彼女に対するのとは一転して優しげで穏やかな口調。
けれどもそんなものを受け入れられるはずもなく、かっと感情を燃え上がらせた僕は男に怒りをぶつける。
奴らの注意が僕に向けばいい、そう思わなかった訳でもなかった。

「おのれ邪悪なる者め、このような無垢な少年まで騙すとは! 誠に許し難い……諸君、この悪魔を獄炎へと堕としてやろうぞ!」

だがそれは逆効果だったのかもしれない。
先程以上に激高した様子の神官の合図で、兵士達が彼女に向けて槍を構えた。
何としても止めなければ。
そう思い彼女の前に立ちふさがろうとした僕だけれど。

「っ!?」

まるで縛りつけられたように動かない僕の身体。
一刻も早く駆け寄らなければならないのに、四肢はぴくりとも動いてくれなかった。

「駄目よ。私は君に傷ついてほしくないの」

何故なのか、その答えは紅い唇から紡がれた言葉で氷解した。
彼女が僕に何か神としての力を使ったらしい。
その支配下にある僕は、手足はおろか口さえも動いてくれず声すら出せない。

「だから、君には来ないでほしかったのよ……。こんな場面なんて見せたくなかった。そうすれば、君の中に素敵な想い出として残れたのに」

僕の方をじっと見ながら、彼女が悲しそうな口調で言う。
こうなることを最初から知っていたのだろうか。
華奢な身体を、兵士達の槍が何度も貫いていく。

「どうか、彼らに憎しみなんて持たないで。穏やかに、幸せに生きて。もう話は出来ないけれど、私はずっと君を見守り続けるわ」

それでも、彼女は眉一つ顰めない。
悲鳴一つ上げない。
まるで何事も無いかのように、僕に向かって悲しそうに語り続ける。

「くそ、これでどうだ!」

憎しみに満ちた声で、兵士達は少女に繰り返し槍を突き立てる。
傷口から流れ出すおびただしい量の鮮血。
それは人間であればとっくに命を落としている程の量で。
一突きされる度に彼女の唇の動きは少しずつ、けれど目に見えて鈍っていく。

「私、君に逢えて幸せだったわ。相思相愛になれてよかった。ありがとう。さよ、なら……」
そして、唇が動きを止める。
今までこちらへと向けられていた頭が力無く垂れると同時に、僕の動きを封じていた力が消えた。
それが一体何を意味しているのか、僕は理解出来てしまった。
彼女の亡骸に駆け寄るような気力も無く、哀しみに心を支配された僕はその場に崩れ落ちる。

「少年よ、お前を騙していた悪魔は祓われた。安心するがよい」

地面に膝をついた僕の前で、神官の男が穏やかな口調で何か話している。
だが、言葉は理解出来るのに一体何を言っているのか全く頭に入ってこなかった。
ただ哀しみだけが心の中に在る。
それ以外の思考が割って入る余地などどこにも無かった。

「我らはこのまま次の村に向かわねばならん。暗くなったら狼や熊が出る故、早く帰るのだぞ」

何も、彼女の亡骸さえも見ず呆然としている僕に対してそう言い残すと男達は去っていく。
彼女と二人きりになると、辺りはひどく静かになった。
音は無い、生の気配も無い。
周囲にはこんなに青々と木々が生い茂り枝葉が揺れているのに、僕には何もかもが死に絶えてしまったように思えた。

「大好き、だったのに……っ!」

抑えきれなくなり、瞳から涙が零れ落ちる。
一度流れるとそれは止まることなく流れ続けた。
空は既に暗い、ようやく思考が少しだけ巡るようになる。
彼女が言っていたことを思い出す。
こうなることをあらかじめ知っていた彼女は、それでも僕に好きと言ってくれたのだ。

「僕だけは、絶対に忘れないから……。死ぬまで本物の神様がいてくれたことを覚えているから……」

南の方に住んでいる部族のほとんどは、既にキリストに改宗しているらしい。
きっと、近いうちに僕の住んでいる村も改宗してしまうのだろう。
そうなればきっと神としてここに存在していた彼女は忘れ去られてしまう。
――だから、僕だけは彼女のことを何があっても忘れない。
伏せていた顔を上げ、野ざらしにされたままの少女の亡骸を直視する。
その瞬間、彼女の顔が幽かに微笑んだような気がした。




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